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ようこそ彦根へ(2)

 そのお客様(男性)は、一人で来られました。「ガイドお願いできますか?」「はい、行きましょう」と、表坂、天秤櫓下の石垣の説明を済ませ、鐘の丸、太鼓門櫓を進み、いよいよ国宝の天守へ来ました。「天守へ登りましょうか?」と問うと、「いえ、建物より石垣を見たいのです」とのお答え。不思議な方だと顔を見ていたら、「実は石垣を専門に学んでいる者です」「先輩から、『彦根城の石垣を見ずして、石垣を語るな!』とのアドバイスがあったので、今日石垣を見に来ました」とのこと。「しめた」、私たちガイドにとって、教わるチャンスです。
 「黒門横の高石垣の長さ131間(236m)は、おそらく日本一の長さです」「ほう、そうですか!」「普通は石垣の強度を保つために、適当な長さで折り曲げます」「なるほど」「しかし、ここの石垣は曲線ながら、折り曲げないで236mもある」「ウーム」「どこまでをどこの石工が積上げたか分ります」「なに、文献にないものをこの方は知っている!」。
 「山崎の石積は見事です、美しい!」「先端にも算木積み方式がなされています」と解説される。このあたりになると、ガイドの私もよくは分りません。「何が美しくて見事なのか?」「見事なのは、石の大きさが整っていて大きい」「そう言われればそうだ」「経済力又は権威がないと、この様にはなりません」「こうなりゃ、とことん学ばなければ」と、覚悟しました。
 第一郭(山崎曲輪)及び第二郭(中堀周り)と、倭城の登り石垣、雁木、鉢巻石垣と腰(巻)石垣等々をご案内すること約4時間、こちらは昼食抜きで少々バテ気味。その方は元気そのもので、ケロッとしておられる。こちらの体力を考えて頂き、もう一度来ますと気持ちよく帰られました。ガイドの私(72歳・女)は少々疲れましたが、本当に心地よいお客様でした。その方(さるお役所の石垣専門担当)はやはり再度お見えになったと、後日耳にいたしました。
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